はじめに:どうしてことば以外で伝えることが難しいの?
「表情があまり変わらない」「身振りや視線で気持ちを伝えるのが苦手」―― そんなお子さまの姿を見て、対人関係やコミュニケーションを心配される保護者さまも多いかもしれません。
ことば以外の伝え方(非言語コミュニケーション)には、表情・視線・しぐさ・声の調子・姿勢など、たくさんの要素が関係しています。これらは成長とともに少しずつ身につく力であり、経験や環境によっても発達のペースが異なります。
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、ことばだけでなく「伝わった」「わかってもらえた」という経験を大切にし、表情・ジェスチャー・絵カードなど、さまざまな方法で気持ちを伝えられるよう支援しています。また、施設によっては、言語聴覚士(ST)が関わり、個別の課題に合わせた支援を行うこともあります。
1 感情を表情で読み取り・伝える力を育てる
表情は、ことばよりも先に使われる大切なコミュニケーション手段です。 しかし、お子さまの中には相手の表情の変化に気づきにくかったり、自分の気持ちを顔で表すのが難しいことがあります。
療育での支援の工夫
- 写真や絵カードを使って「うれしい」「悲しい」「怒っている」などの表情を見比べ、違いを感じ取る
- 鏡を使って「笑う」「びっくりする」など、いろいろな表情をつくる練習をする
- 絵本や映像を見ながら「この人はどんな気持ちかな?」と考える時間を作る
- 実際の活動の中で「うれしいね」「残念だったね」と言葉を添え、気持ちと表情を結びつける
2 身体で気持ちを表すジェスチャーの力を育てる
ことばがうまく出ないときでも、手や体の動きで気持ちを伝えることができます。
たとえば「バイバイ」「ストップ」「こっちにおいで」といった動作は、伝える力を育てる第一歩です。
療育での支援の工夫
- 手遊び歌やリズム遊びを通して、自然に体の動きを覚える
- 「大きい」「小さい」「長い」「高い」「たくさん」などを身振りで表し、ことばと動きを結びつける
- ゲーム形式でジェスチャーを使う活動を取り入れ、楽しくやり取りを体験する
- 喜びや怒りなど、感情を全身で表す遊びを通して「伝える楽しさ」を感じられるようにする
3 絵カードやサインなどの視覚的なサポート
言葉での理解が難しいお子さまには、絵や文字、サインといった「見てわかる支援」が有効です。 視覚的な手がかりを使うことで、安心して自分の思いを伝えることができます。
療育での支援の工夫
- 絵カードを使って「お水」「トイレ」「おやつ」など、必要なことを伝える練習をする
- 一日の流れを絵で示し、見通しを持って行動できるようにする
- ジェスチャーや簡単なサインを取り入れ、ことばと動作を一緒に使う
- タブレットなどを活用して、写真やイラストを選んで伝える練習をする
- お子さまに合った伝え方(話す・指差す・見せるなど)を見つけて広げていく
4 ご家庭で意識できる関わり
ご家庭では、「ことばを引き出す」よりも**「伝えたい気持ちを受け取る」**ことを意識して関わることが大切です。
- 表情やしぐさで何かを伝えようとしたときは、まず「伝わったよ」と反応する
- ジェスチャーや絵を使ったコミュニケーションも「いいね」「わかったよ」と受け止める
- 家族の表情を見せながら「うれしい顔」「びっくりした顔」などを一緒にまねしてみる
- 伝えられた内容だけでなく、「伝えようとした気持ち」に注目してほめる
保護者さまへ
ことばのやりとりは、表情やジェスチャーなどの非言語的なサインと結びついて発達していきます。
まずは「伝えたい」「わかってほしい」という気持ちを大切にし、ことば以外の方法も「立派なコミュニケーション」として受け止めましょう。
児童発達支援・放課後等デイサービスでは、こうした「伝わる体験」を積み重ねながら、
お子さまが自分らしく気持ちを表現できる力を育てていきます。